
沖縄美ら海水族館のジンベエザメ「ジンタ」が3月11日、飼育開始30年を迎える。
ジンタの飼育が始まったのは、「国営沖縄記念公園水族館」時代の1995(平成7)年。雄で、当時は全長4.6メートル、体重800キロだったが、現在は全長8.8メートル、体重6000キロにまで成長しており、言わずと知れた同館のシンボルとして来館者を楽しませている。
美ら海水族館統括でサメ博士の佐藤圭一さんによると、ジンタは沖縄県内の漁業者の定置網にかかり、保護される形で水族館にやって来た。当時、世界でもほとんど解明されていなかったジンベエザメの生態の謎を世界最大級の水槽を持つ美ら海水族館で解明する狙いもあったという。水槽でのジンベイザメの飼育個体としては、ジンタが世界初の事例だという。
佐藤さんによると、長年の飼育の中で特に大変だった時期は、2010(平成22)年~2011(平成23)年にかけて。「人間でいう思春期にあたる行動が見られ、急にオキアミや小魚などの餌を食べなくなったり、水槽内のシートにかみついたりした。普段と違う行動の原因も分からず、日々悩みながら飼育していた。今考えるとまさに反抗期だった」と振り返る。この行動を研究する中で、同水族館は性成熟のジンベイザメのプロセスを解明し、行動データやホルモン値、血液検査の結果などから、同期間に大人の個体になったことを確認した。
「成長過程を間近で観察し、世界で初めてさまざまな科学的証拠を得ることができた。国内外の水族館や研究機関との国際的な学術交流にもつながっている」と佐藤さん。「ジンタの性格は暴れん坊で、まだまだ若い個体。当館の先進性を示しながら、今では沖縄観光の象徴の一つにもなった。ジンタを通して生き物の大切さや海洋環境保全も啓発していきたい。いつまでもジンタが健康でいてくれることが一番大事。できる限りの健康管理を行う。末永く元気に暮らしてほしい」と話す。
現在、同水族館では「ジンタ飼育30年記念企画」として、大水槽前で毎日11時45分からジンタの解説を行うほか、「ジンタの歴史パネル展」「バックヤードツアー」などを行っている。今月31日まで。